ギャンブル確率論
前回の37%の法則についての記事の反響が大きかったので今回も確率の話を取り上げてみる事にしました。
今回のテーマは”ギャンブル確率論”です。
主人公はエドワード・ソープという人物です。
エドワード・ソープとは?
アメリカのシカゴ生まれ。物理学や心理学を学び、マサチューセッツ工科大学(MIT)で数学講師となった人物です。(1932-)
彼は自らの頭脳を武器にお金儲けの仕組みを考え、ギャンブル界を震撼させました。
ある日周りからふと聞こえた「確実に勝てるギャンブルなんてない」という声。
その言葉を聞いたソープの心に火が付いたのです。
ギャンブルの期待値
ギャンブルには期待値というものがあります。掛金に対して戻ってくる見込みの金額の事です。
また還元率という言葉もあります。こちらは掛金と戻ってくる見込み金額の割合の事です。
例えば100万円払って50%の確率で150万円、30%で30万円、20%の確率で0円になるギャンブルがあったとします。
期待値は(50%×150万円)+(30%×30万円)+(20%×0円)=84万円。
還元率は(84万円/100万円)で84%となります。
また還元率を”勝つ確率”に置き換える場合は1/2して下さい。還元率100%であれば勝つ確率は50%、還元率84%であれば42%です。
期待値・還元率というのは、あくまでも長期的に試行した場合に収束する値のことです。1回、2回の試行で見えてくるものではありません。
数百回、数千回試行する事で、ようやくその割合に収束していくのです。
主なギャンブルの還元率
日本で行われている主なギャンブルの還元率は以下となります。
種類 | 還元率 |
競馬 | 約75% |
競輪 | 約75% |
競艇 | 約75% |
オートレース | 約75% |
宝くじ | 約46% |
サッカーくじ | 約50% |
パチンコ | 約80~90% |
ビンゴ | 約80% |
一般的に認知されている「宝くじ」が還元率としては相当低いです。逆に言うと親の取り分が大きいのです。そのためあれだけ広告を打ち上げても儲かるビジネスとなっているわけです。
そしてギャンブルと言えばカジノ。
カジノで行われている主なゲームの還元率は以下になります。
種類 | 還元率 |
スロット | 95% |
ルーレット | 94% |
バカラ | 98% |
クラップス | 99% |
ブラックジャック | 96%~102% |
軒並み高いです。そして「え?」と気付かれた方がいると思います。
ブラックジャック 102%
そう、ある事を行うとブラックジャックの還元率は100%を超えるのです。
その方法を編み出したのが、冒頭で解説したエドワード・ソープなのです。
ここで一旦ブラックジャックのルールをおさらいしておきます。
- 親(ディーラー)と子の勝負。
- カードを2枚めくり、足した数が21に近い方が勝ち。
- 21を超えてしまうとその時点で負けになる。(バースト)
- 11~13のカードは10として扱う。
- Aは1と11、どちらとして使っても良い。
そしてディーラーにはこんなルールもあります。
- 17未満の場合はカードを引かなければならない
- 17以上の場合はカードを引いてはならない
ディーラーは子の数値によって引く、引かないを決めるのではなく、上記2つのルールを順守してゲームを進めているだけなのです。
そのため、子の数値が12に対しディーラーが16だったとしても、ディーラーはバースト覚悟でもう1枚引かなくてはならないのです。
こう思うと「あれ?ブラックジャックって子の方が有利なんじゃ?」と思うかもしれません。いえ、違います。唯一にして最大の利点がディーラーにはあるのです。
それは子⇒親の順番でカードをめくるため、子が先にバーストした時点で無条件で子の負けになる、という点です。
ディーラーは子のバースト(自爆)による不戦勝の確率が非常に高いのです。
これら調整によって若干ディーラーが有利という奇跡的なバランスが構築されています。
そんなブラックジャックですが、ソープの独自理論によって還元率100%を上回る方法が生み出されました。
その方法はカウンティングと呼ばれています。
”カウンティング”とは場に見えているカードの種類、枚数を数え、残りのカードを予測し勝率を上げるテクニックの事です。
例えば自分の数値が12だった場合、山札の中に10以上のカードが多ければ引かない方が良いし、少なければ引いた方が良い事になりますよね。
こういった確率論を駆使して、ソープは50%以上の確率で勝てるテクニックを確立していったのです。
ブラックジャックの必勝法があるとの情報を聞きつけた世界中の富豪達はもう黙っていられません。
皆口々に「私の金を使って儲けてくれ!」と、こぞってソープに出資しようと考えます。
ソープはその出資資金をもとに、ラスベガスのカジノへ乗り込みます。
そして見事勝利したのです。
ソープの報酬は約2万5000ドル、現在の価値にしておよそ900万円です。これは総利益の1割です。
「あれ?少なくない?」と思うかもしれません。しかしソープは金儲けのためではなく自分の理論が正しいことを証明するためにやった事だったので十分満足だったのです。
そしてソープは独自の確率理論をまとめた本を出版しました。興味のある方は是非読んでみてください。
その後ブラックジャックのルールは変更され、ソープの必勝法であるカウンティングは禁止となりました。
だがソープはこれで終わるような男ではありません。今度は他のギャンブルに手を出します。
それはルーレットです。
しかし前述した通り、ルーレットの還元率は94%です。普通にやっていたのでは負ける確率の方が高いです。
では、どうやって還元率を100%以上に上げたかというと、ソープは以下の方法で行いました。
- コンピュータを使い玉の速度や落下地点を計測。
- 計測結果をもとにルーレットを8つのエリアに分割し、エリア内の全てのマスに賭ける。
もう、発想が変態的です。ルーレットの賭けるタイミングが玉を回したあとでも可能なのを利用した手法です。
確実な落下地点の算出までは特定できませんが、ここらへんに落ちる確率が高いであろうポイントの算出は可能なのです。
この理論をもとに、ソープはカジノに乗り込み、またも勝利を手にしたのです。
ゲームにおける期待値
ここで目線を変えてゲームにおける期待値というものを見ていきましょう。
まず皆さんが気になるであろう、ガチャのコンプ期待値を計算してみたいと思います。
前提としてガチャで出て来るキャラの確率は全て同等だと仮定します。
カードの種類が3種類の場合、おおよそ何回引くとコンプ出来るでしょうか?
- 1回目は被らず100%NEWキャラをゲットできます。
- 2回目は1/3で被り、2/3でNEWキャラをゲットできます。
- 3回目は2/3で被り、1/3でNEWキャラをゲットできます。
コンプガチャの期待値は以下の計算式で算出できます。
n×(1/1+1/2+・・・+1/n) ※n=キャラ数
3種類の場合の期待値は3×(1/1+1/2+1/3)=5.5回
つまり5.5回ガチャを回せば、おおよそコンプリート出来る計算になります。
じゃあ今度は10倍の30キャラにしてみましょう。
3種類が6回ぐらいだから、30種類なら大体60回ぐらいかな?と思うかもしれません。
ところが正解は120回です。
最初の10体~20体ぐらいは被りづらいですが、後半の残り10~5体ぐらいになってからは相当被りが発生します。
キャラが増えれば増えるほど二次曲線的にコンプに必要な回数が増えるのです。
コンプ勢にとっては試行回数が増えてしまうだけの話ですが、数回しか回さないライト層にとっては「特定のキャラは狙いにくくなるが、各キャラは被りにくい」という面白いバランスになります。
カジノの次に目指したモノ
ソープがカジノの次に目を向けたのが株式市場です。
人間の様々な思いが交錯する株式市場に法則があるのか?疑問視されていましたが、彼独自の確率理論でなんと28年もの間、利益を出し続けました。
最終的には初期投資額を180倍にまで膨らませる事に成功したと言われています。
彼にとっては人間の行動、心理ですら確率で計算出来てしまったのです。
最後に
現在80歳を超えたソープが目指している確率理論があります。
それは「低温医学で死んだあと生き返る確率」です。
そして確率に魅せられた男はこう言っています。
生き返る確率は2%、そして生き返った後幸せになる確率は50%だ、と。
人生をかけて51%を狙い続けていたソープですが、幸せになる確率だけは50%でした。
期待値は裏切らない。幸せになる確率51%を目指して、試行回数を増やしながら人生を歩んでいきたいですね!